伊豆下田碁石ヶ浜

 下田から船で出て石廊崎の方へ向かうと、東急ホテルやジャパンクラブに続いて小高い丘の上にちょっと大きな別荘地が見えてきます。戸数は百か二百か、代赭色に統一された建物がそれぞれ海を見下ろしています。見るからに高級別荘地です。
  しかしどう考えても寂しい。陸路を行けば下田から2、30分でしょうが、夏場は交通渋滞で名うての難所です。近くに商店もなさそう。海から見たところは陸 の孤島です。ましてそう古い売り出しではないから、昨今の不景気で相当の売れ残りがあるのではないだろうか。住んでいる人はさぞ淋しいだろうな、と思って いました。

 ところで伊豆ガーデニングクラブを始めたところ、この碁石ヶ浜の住人が2軒入会してきました。そして「ぜひ下田にも来てくれ」とおっしゃいます。
 クラブ発会の一番の目的が「花作りを通して交流を深める」ことですからお庭拝見は大事な行事であり、先日行ってきました。「碁石ヶ浜は淋しい」との先入観がありますから、さぞかし「人恋しく」暮らしているのだろうと勝手に考えていました。

 別荘地の入り口に大きな管理事務所があり、部外者は立ち入り難い雰囲気です。管理は行き届いているようです。1軒1軒の敷地は 広く、建物はそれぞれ違いますが屋根と壁の色が統一されていて、どうやら伊豆急の建て売り分譲のようです。どの建物も新しく、我々の住んでいる伊豆高原の 伊豆急分譲地とは全然違います。伊豆高原の伊豆急分譲地はもう35年くらい前から開発されていて、建物はまちまちだし、古いのはもう朽ちかけています。
 後から聞いたことですが、碁石ヶ浜分譲地はもう全部売れていて、定住者は全区画の30%だそうです。

 それにしても「淋しい」と思っていた予想と何となく感じが違います。それほど人を見かけるわけでなく、定住率も高くないのに、淋しい感じがあまりしません。なんとなく人の気配が濃厚なのです。
  どうして? なぜ? といろいろ考えて、はたと思い当たりました。ここは家と家との間に垣根や柵がないのです。垣根がないからご大層な門もあまりありませ ん。非常にオープンです。このオープンさが街に人の雰囲気を伝えているのです。垣根のないことがこれほど地域に人の温もりを生みだすものだとは知りません でした。

 垣根のない街作りが、我々の目指すオープンガーデンの目的の一つであることを知りました。